Bistrot Les Enfants Rouges|篠塚大シェフ

PARISで最も古い屋根付きのマルシェはLe Marais地区にあるLes Enfants Rouge だ。1615年に開設され、今もパリっ子と観光客で大変に賑わっている。食材を売る店も多く並ぶが、食事のできる魅力的な店も多い。昨今ではYoutubeでその調理シーンがバズったAlain MIAM MIAMが世界的に最も知られるカウンターかもしれない。具材の豊富なその場で作るサンドイッチはダイナミックで楽しく美味しく、わざわざ狙いをつけてやってきた旅行客をがっかりさせることもない。

このマルシェの周辺には様々なタイプのカフェやビストロが並び、十分に激戦区と言っていいエリアだ。そこでLes Enfants Rougesという(店を探すときには少々紛らわしい!)名前のビストロを構えるのが篠塚大だ。彼は日本での料理学校や料理店での実践の経験をしていない。いきなりパリに来てフランス料理を学んだ。いくつかの店での経験の後Yves Camdeborde シェフの名高いビストロ Le Comptoir du Relais6sous chefを務めた後、今のこの店を構えた。New York Times, Figaro, Le Monde などに、ビストロ中のビストロとして選ばれ賞賛されている。クラシックなフレンチが好きと自分の軸をそこにしっかり置くものの、自然体で日本の食材や調理法を織り込み、コンテンポラリーなフレンチ・タッチで軽快さを出したりもする。スタッフのチームワークもよく、キッチンの雰囲気の良さが、ダイニングにもしっかりと伝わってくる。よきビストロならではの美味しい空気が流れる。その意味では、まさにLes Enfants Rouge 界隈、まさにLe Marais界隈の美味しい店である。

柑橘類が好きで普段から多用する彼が、今回は乾燥させたオレンジピールをシロップ漬けたものをLe Moulinでフィニッシュに試してみた。ホタテ、葉野菜、菊芋というテクスチャーも奥行きも異なる3つの食材をサフランソースに漬け、それをオレンジピールグラッセで纏めてみた。奥行きと広がりとその中での展開、見事なコンポジションであり美味しい一皿である。

 

シェフのインタビューとル・ムーランを使った料理紹介はこちら: