CHEF KEITA KITAMURA now in Tokyo

北村シェフとMichel BRAS channel とのコラボは、彼がパリのERHのシェフをしていた2022年のことである。Cuisine de voyageとも言われるエキゾティックなスパイスやハーブを巧みに使うシェフが、Le Moulinを使って新たな試みに挑戦してくれた。

ここまでミシュラン1つ星を3年継続していた彼は、明らかに新たな高みへの道筋を模索していた。日本ではLe Creation de NARISAWAで長年腕を磨き、その他数人の料理人から色々学んできたという。パリではピエール・ガニエールなどを経て、ビストロのシェフを5年間経験。それまでずっとガストロノミー一筋だったので、学ぶことが多く、技術力をつけるということにおいてもとても良い経験だったと語る。

さまざまな経験と持ち前の柔軟性と感性で、北村シェフの引き出しはとても豊富だ。ERHはオーナーが日本酒とのペアリングを基本とした料理というテーマの上での構築だったので、それを土台としたCuisine de Voyage。フランスを中心とした南ヨーロッパの食材を中心に、日本で磨いた自分の技術と感性を中心には据えるものの、決して日本旅行などに向かわない、シェフ北村が世界を巡る料理だった。

Michel BRAS kitchenwareとコラボさせていただいた折は、すぐにLe Moulinの特性と可能性を理解し、彼ならではの旅の地平線をビデオでも語っているようにダイナミックに広げる提案を見せてくれた。

クルジェットの天ぷらにネパールのティムやインドネシアのアンダリマンを粉砕してかけ香りを出した一品の奥行きと立体感、オマール海老・あんず・フレッシュ・アーモンド・インゲンの合わせたものにバニラの鞘とバニラに香りの類似した豆とを細かく砕いてかけた時の重層的な酸味のセンセーションの素晴らしさ、そして3品目のフランス産鴨に北村シェフらしい火入れを施し、ソースに合わせてオレンジ・ゼスト、乾燥ビーツ、乾燥コリアンダーのミックスを仕上げに振りかけ、素晴らしい味と食感と香りの深み。まさに北村啓太にしかないcuisine de voyageである。


パリでミシュラン1つ星を4年間維持した北村は東京からの新しいオファーに、ERHの数名の仲間を連れてチャレンジすることにした。そこで北村は次の高みを目指す。パリで大きく成長した北村が次に東京で仕掛ける新しい食体験、新たなる旅は2023年秋から始まる。