自分たちの菜園でその日の野菜やハーブを育て、その個性や変化を探求し、より自分の料理を深めていく。今では世界の多くの料理人がそうした手法を採用し、生命のダイナミックさを伴ったそれぞれの創作を味わせてくれる。素晴らしいことだ。ミシェル・ブラスは、それを半世紀近く前からそれを実践してきたパイオニアの一人であり、今も世界の料理界、foodies, 上質で自然体なwell beingを目指す人々などさまざまな人々に大きなインスピレーションを与えている。
日本のレイク・ディストリクトとも言われる富士five lakesの一つ、河口湖地区にレストランを構え2021年にはゴ・エ・ミヨYAMANASHIも獲得している豊島雅也も、自宅前に菜園、蜂蜜採取箱などを構えるそうした方向で知られるシェフだ。彼のユニークなところは、自家菜園などに留まらず、河口湖全体環境の一刻一刻と共に生き、料理を考え、来る客に提供することだ。
山を歩き、鹿の足跡の様子を見て、白樺の樹液や各種山菜や野草を採取する。山菜や花は毎年微妙に異なる成長を見せるし、少し時期が変われば場所も変わりもちろん味も変わる。湖面に富士山の影を映す河口湖の周辺環境は数日単位で変化し、自ずと食材もその採取判断も、自ずと調理自体も敏感に変化してゆく。
豊島は厨房に立つ前に毎日山に入ってそうした変化を楽しみ、その成果を客との対話と提供する料理に凝縮させる。少人数のキッチンだからできるオペレーションでもあるが、それによって見事なまでに独自の世界を作っている。
驚くようなクリーンなジビエを持ってきたハンターに弟子入りをして仕留め方や後処理を学び、それでもある動物の個体差を活かす料理法を研究し、「繊細な野生味」という逆説的とも言える味を提供している。現在は、河口湖の駅近くに店を持つ豊島シェフだが、近々もっと奥まった自然に抱かれたロケーションに店を移転し、調理に使う火はすべて薪で行うオペレーションのキッチンにする予定だ。 Uncontrollable なものを求めそれらを探求し繊細な仕上がりへと昇華させる。そのユニークなガストロノミー体験はさらに楽しく優しく煮詰められていきそうだ。
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